東京地方裁判所 昭和52年(特わ)831号 判決 1977年11月07日
本店所在地
東京都渋谷区神山町九番二〇号
株式会社下畦組
(右代表者代表取締役下畦幸彦)
本籍
東京都渋谷区神山町一六番地
住居
東京都渋谷区神山町九番二〇号
会社役員
下畦幸彦
昭和二年一〇月八日生
右の者らに対する法人税法違反被告事件につき、当裁判所は、検察官河内悠紀出席のうえ審理を逐け、次のとおり判決する。
主文
被告人株式会社下畦組を罰金八〇〇万円に、被告人下畦幸彦を懲役一〇月にそれぞれ処する。
被告人下畦幸彦に対し、この裁判確定の日から三年間、右刑の執行を猶予する。
理由
(罪となるべき事実)
被告人株式会社下畦組(以下「被告会社」という。)は、肩書地に本店を置き、左官工事の請負及び右に附帯する一切の業務を目的とする資本金一〇〇万円の株式会社であり、被告人下畦幸彦(以下「被告人」という。)は、被告会社の代表取締役としてその業務全般を総括していたものであるが、被告人は、被告会社の業務に関し法人税を免れようと企て、外注費、労務費を水増し計上して簿外預金を設定する等の方法により所得を秘匿したうえ、
第一 昭和四八年五月一日から同四九年四月三〇日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が五〇〇三万九八七一円あった(別紙(一)の修正貸借対照表参照)のにかかわらず、同年六月二九日、東京都渋谷区宇田川町一番三号所在の所轄渋谷税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が四七四万六六四八円である旨の虚偽の法人税確定申告書(昭和五二年押第一七三〇号の符号一)を提出し、そのまま法定納期限を徒過させもって不正の行為により被告会社の右事業年度における正規の法人税額一八〇八万六七〇〇円(税額の算定は別紙(三)の一計算書参照)と右申告税額との差額一六六四万五一〇〇円を免れ、
第二 昭和四九年五月一日から同五〇年四月三〇日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が五九二二万四九五三円あった(別紙(二)の修正貸借対照表参照)のにかかわらず、同年六月二七日、前記渋谷税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が二一万二九一七円でこれに対する法人税額が八一〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書(前同号の符号三)を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって不正の行為により被告会社の右事業年度における正規の法人税額二二九一万八三〇〇円(税額の算定は別紙(三)の二計算書参照)と右申告税額との差額二二九一万〇二〇〇円を免れ
たものである。
(証拠の標目)
第一 判示冒頭事実を含む判示事実全般につき、
一 被告人の当公判廷における供述並びに大蔵事務官に対する質問てん末書(三通)及び検察官に対する供述調書(乙3ないし6)
一 西山逸平の検察官に対する供述調書(甲一13)
一 登記官作成の登記簿謄本(甲一1)
第二 別紙(一)、(二)の各修正貸借対照表掲記の各勘定科目別「過年度金額」及び「当期増減金額」欄記載の数額のうち、
( ) 「現金」 (各<1>)につき、
一 被告人の大蔵事務官に対する昭和五一年四月六日付質問てん末書(問十二)乙5
(ロ) 「預貯金」 (各<2>)につき、
一 被告人作成の申述書及び確認書(乙1、2)
一 大蔵事務官作成の簿外預金調査書(甲一2)
(ハ) 「工事未収金」 (各<3>)につき、
一 西山逸平の大蔵事務官に対する昭和五一年四月一六日付質問てん末書(甲一12)
(ニ) 「仮払金」 (別紙(二)<4>)につき、
一 大蔵事務官作成の外注費および労務費の水増額調査書(甲一8)
(ホ) 「前渡金」 (各<5>)につき、
一 大蔵事務官作成の簿外前渡金調査書(甲一3)
一 前掲(甲一12)に同じ
(ヘ) 「貸付金」 (各<6>)につき、
一 大蔵事務官作成の簿外貸付金調査書(甲一4)
(ト) 「未成工事支出金」 (各<8>)につき、
一 大蔵事務官作成の経費配分額調査書(甲一5)
一 前掲(甲一8)に同じ
一 西山逸平の大蔵事務官に対する昭和五一年一月二九日付質問てん末書(甲一11)
一 前掲(甲一12)に同じ
(チ) 「有価証券」 (各<15>)及び「保証金」 (各<16>)につき、
一 大蔵事務官作成の有価証券等取引調査書(甲一6)
(リ) 「未払金」 (別紙(一)<18>、同(二)<19>)につき、
一 大蔵事務官作成の架空未払金調査書(甲一7)
一 前掲(甲一8、11)に同じ
(ヌ) 「借入金」 (別紙(一)<19>、同(二)<20>)につき、
一 前掲(甲一4)に同じ
一 稲吉能子の大蔵事務官に対する質問てん末書(甲一14)
(ル) 「預り金」 別紙(一)<21>、同(二)<22>)につき、
一 前掲(甲一8)に同じ
(ヲ) 「未納事業税」 (別紙(一)<23>、同(二)<24>)につき、
一 大蔵事務官作成の事業税計算書(甲一9)
(ワ) 「未収入金認容」、「前受金認容」、「未成工事支出金否認」及び「未払原価否認」(別紙(二)の<31>ないし<34>)につき、
一 押収にかかる昭和四九年四月期法人税修正申告書及び昭和五〇年四月期法人税確定申告書(昭和五二年押第一七三〇号の符号二、三)
第三 同右各公表金額及び過少申告の事実につき、
一 押収にかかる昭和四九年四月期及び昭和五〇年四月期法人税確定申告書(前同号の符号一、三)
(法令の適用)
法律に照すと判示各所為はいずれも法人税法第一五九条第一項(被告会社については、さらに同法第一六四条第一項)に該当するところ、被告人については所定刑中懲役刑を選択し、以上は刑法第四五条前段の併合罪であるから、被告会社については同法第四八条第二項により合算した金額の範囲内で罰金八〇〇万円に、被告人については同法第四七条本文、第一〇条により犯情重いと認める判示第二の罪の刑に法定の加重をした刑期範囲内において懲役一〇月にそれぞれ処し、被告人につき刑法第二五条第一項を適用してこの裁判確定の日から三年間右刑の執行を猶予することとし、注文のとおり判決する。
(裁判官 半谷恭一)
別紙(一)
修正貸借対照表
昭和49年4月30日
株式会社 下畦組
別紙(二)
修正貸借対照表
株式会社 下畦組
昭和50年4月30日
別紙(三)
ほ脱税額計算書
自 昭和49年5月1日
至 昭和50年4月30日事業年度分
株式会社 下畦組